はんだこどもクリニック

東京都北区の小児科 はんだこどもクリニック

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北区ドクターズ interview

知っておきたい疾患


知っておきたい疾患

A.ヘリコバクターピロリ感染症
ヘリコバクターピロリは、胃内に住み着いている細菌で、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫などの原因となります。また潰瘍となった病変は、萎縮性胃炎から胃がんへと進行することがあります。ヘリコバクターピロリは、胃内の尿素からアンモニアを産生し、胃酸を中和し、胃内に持続感染します。

感染のきっかけは、小児における口から口への感染で、10歳で10-20%の子供が感染します。それゆえ幼児期に、大人の口に入れたものを与えるのは、厳禁です。胃炎、胃潰瘍でヘリコバクターの診断がつけば、プロトンポンプ阻害剤、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3者による内服治療があります。
また合併症として、鉄欠乏性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、Guillan-Barre'症候群などがあります。
2013年7月6日

 

1.インフルエンザ脳症
インフルエンザに罹った当日から、翌日という早い時期に、けいれんや、幻覚や幻視を思わせる意味不明な言動、急速に進行する意識障害で発症します。けいれんは、子供に多い熱性けいれんと異なり、けいれんしている時間が長かったり、一度止まってもまた始まったりします。

インフルエンザ脳症は、ウイルスが脳に入り込んで炎症を起こすインフルエンザ脳炎と異なり、ウイルスは脳内に見つかりません。ウイルスが体に入り込んだ時、これを抑えようとするマクロファージなどの炎症細胞が分泌するサイトカインという物質が、過剰に働き過ぎる事が原因です。またこのため脳浮腫という脳がむくんで腫れた状態になり、このため意識障害などの症状が起きます。
インフルエンザ脳症は、A香港型の流行時に多く、年に100-250人位が罹ります。また罹った人の約半数が、死亡するか、重い後遺症を残します。年齢は、0歳は少ないのですが、1歳をピークとして6歳未満に多く発生しています。

発熱に対して使われる解熱剤が、脳症との関連を疑われ、インフルエンザの時は、ほとんどアセトアミノフェンのみが、比較的安全に使えるものとされています。インフルエンザ脳症は、症状の出現が早く、進行性で、また100%確実な治療法がまだないことから、インフルエンザに罹らないことが大事です。
予防としては手洗い、うがいの励行や、流行時の外出をできるだけ避けること、室内の加温加湿、それからインフルエンザワクチンの接種などです。

 

1.インフルエンザ脳症-2
メチルプレドニゾロンパルス療法の早期開始が、予後を改善することが明らかになりました。

 

2.急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
あまり聞きなれない病名かもしれませんが、05年6月の日本脳炎ワクチン勧奨中止に関連する病気です。麻疹、水痘などのウイルス感染症に罹患後、または予防接種後数日から1ヵ月後に発症します。
症状は、発熱、けいれん、意識障害、視力障害、歩行障害、運動麻痺などの多彩な神経症状です。予後は比較的良好で完全に回復する例が多いが、時に後遺症を残します。

治療としては、軽症例はプレドニゾロンの内服、重症例はメチルプレドニゾロンパルス療法を実施します。病気の本態は、主に大脳白質の脱髄で、MRI検査のT2強調像のFLAIR法で容易に診断できます。
日本脳炎ワクチン接種後の急性散在性脳脊髄炎の発生頻度は、100万接種に1回位で、重篤な例は、500万に1回位です。06年秋には、子供の例としては何年ぶりかで、熊本で3歳の日本脳炎が発症しました。組織培養型の新しいワクチンの採用まで、まだ3年程かかりそうなので、このまま日本脳炎ワクチン接種を控えていてよいか、検討が必要と思われます。

 

3.細気管支炎
冬に、2歳未満、特に2-6ヶ月の乳児が罹ります。原因は、ウイルス感染で、そのうち70-80%は、RSウイルスです。病態は、細気管支の炎症と浮腫、上皮脱落による閉塞です。そのため呼気性喘鳴と肺の過膨張、呼吸困難が起きます。症状は、水様性鼻汁に始まり、咳、喘鳴、多呼吸、陥没呼吸、チアノーゼ、哺乳不良などです。
39-40℃の発熱が数日間見られます。6ヶ月未満の乳児では、無呼吸も認められます。

またホルモンの異常であるSIADH(ADH分泌異常症候群)と低Na血症も認めることがあります。治療は、哺乳不良、脱水に対する輸液、呼吸困難、チアノーゼに対する気道分泌物の除去、酸素投与、呼吸管理、無呼吸に対するアミノフィリン投与などです。ステロイドが有効との報告もあります。

RSウイルスに対する根本治療はないので、早期発見、早期治療が大事です。細気管支炎が重症化しやすいリスクを持っている子供(早産児、生後2ヶ月未満、先天性心疾患児など)では、呼気性喘鳴、哺乳不良、無呼吸を認めたら、直ちにRSウイルス迅速診断テストを行い、陽性なら、入院加療を考えるべきです。予防としては、早産児に対して、抗RSウイルスモノクロナール抗体が投与されて重症化を防いでいます。

 

4.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
流行性耳下腺炎の典型的な症状は、発熱、耳下腺の腫れと疼痛です。冬から初夏にかけて流行し、3-6歳の幼児が罹りやすく、3-4年ごとに大流行があります。最近では05年が流行年でした。2-3週の潜伏期間を経て発症しますので、おたふくかぜの子供との接触歴があれば診断できますが、接触歴が不明の場合は、診断は簡単ではありません。それは耳下腺が腫れる病気が、おたふくかぜだけではないからです。

発熱と耳下腺の腫脹を示すものには、化膿性耳下腺炎、反復性耳下腺炎、おたふくかぜウイルス以外のウイルスによる耳下腺炎などがあります。接触歴がない時は、血中のIgM抗体を測定します。
おたふくかぜは、診断がついても、水痘やインフルエンザのように、特異的な治療薬があるわけではないので、発熱や痛みに対して解熱鎮痛剤を使って、様子を見るだけです。ただおたふくかぜには無菌性髄膜炎、難聴、膵炎、思春期を迎えた男子の睾丸炎、女子の乳腺炎、卵巣炎などの合併症が多くあり、この中で難聴は、生涯治ることがないので、子供の将来を考えると大きな問題です。これを防ぐには、おたふくかぜワクチンの接種が有効です。

またおたふくかぜには、不顕性感染という、耳下腺腫脹などの明らかな症状が出たことがないのに、すでにおたふくかぜに罹っていて抗体を持っている人がいます。不顕性感染があったかどうかは、血中のIgG抗体を調べれば分ります。

 

5.インフルエンザ菌感染症
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は、小児感染症にとって重要な起炎菌で、菌血症に伴う髄膜炎、急性喉頭蓋炎、化膿性関節炎、心外膜炎などの全身性感染症と、上気道からの直接伝播による中耳炎や副鼻腔炎の原因菌です。

全身性感染症を起こすインフルエンザ菌は、日本ではほとんどがb型によるもので、Hibと呼ばれます。Hibに罹る年齢は、生後3ヶ月から3-4歳です。治療は、適切な抗生剤を十分量点滴することです。
耐性菌の問題もあり、治療の前に必ず血液培養を行い、菌の抗生剤に対する感受性を確認します。髄膜炎や急性喉頭蓋炎は、死亡することもあり、また重い後遺症を残すこともあります。

そこで抗生剤による治療よりも確実なのは、ワクチン接種によって予防することです。ワクチン接種によって、Hibによる髄膜炎のほとんどは防ぐことができるようになります。この秋(07年)から日本でもHibワクチンの接種が可能になる予定です。

 

5.インフルエンザ菌感染症-2
Hibワクチンの接種開始は、来年(08年)の1月からになる模様です。

 

6.突発性発疹
生後6ヶ月から1歳の乳児が熱発した時に、まず一番に考える疾患です。主たる症状は、発熱のみで、機嫌や食欲も悪くないことの方が多い。38℃から40℃の熱が3日くらい続いてから解熱し、発疹が出現します。
発疹は、あくまで体が中心です。発疹の量が少ない時は、ほとんど体にしか出ません。量が多いと、顔、そして四肢にも出現します。発疹出現時に、非常に不機嫌になることが多いのが特徴の一つで、これが母親を困惑させます。

それと痙攣を伴うことがあるのが、もう一つの特徴です。突発性発疹は、生まれて初めての高熱であったり、更に痙攣したりで、母親にとっては不安を強く感じる疾患です。ただ比較的機嫌もよく、食欲も落ちない場合は3日経てば自然に解熱すると考えて、落ち着いて対処していただければと思います。
原因はHHV6(human herpes virus 6)という水痘の仲間のウイルスが原因です。成人から乳児に移り、乳児から乳児への感染はないと考えられています。HHVにはHHV7というウイルスもあって、これに感染すると突発性発疹とほとんど同じ症状を示します。このため突発性発疹を二回やったという子供が出てきます。

またまれに脳炎、脳症の合併が見られます。発熱の3日目頃に採血すると、白血球減少、好中球減少、CRP陰性、GOT,GPT,LDHの軽度増加が認められます。これが確認できると今日、明日中には解熱するでしょうと予測が立てられます。治療はどうしても機嫌が悪いときに解熱剤(アセトアミノフェン)を使うだけです。

 

7.ターナー症候群
女性の染色体は、44本の常染色体と、2本のX染色体からなります。つまり46、XXです。このX染色体の1本が欠如したり、部分欠失した場合がターナー症候群です。女児の1,000-2,000人に1人が生まれます。主な症状は、低身長と卵巣機能不全で、知能は正常です。

身長は、生まれた時から小さく、3歳までに-2SD~-3SDになります。卵巣機能不全は、二次性徴の欠如や不妊の原因になります。その他の症状としては、先天性手背・足背浮腫、翼状頚、外反肘、中耳炎、聴力障害、馬蹄腎、大動脈弁に関する異常、耐糖能異常、自己免疫性甲状腺疾患などがあります。

低身長に対する治療は、成長ホルモン療法があり、公費負担で行えます。著しい低身長の女児については、いつでもターナー症候群を考える必要があります。性腺機能不全には、女性ホルモンの投与を行います。エストロゲンから始め、プロゲステロンを投与します。

 

8.パルボウイルス感染症
パルボウイルスB19(以後B19)による人への感染症で、終生免疫です。

A.伝染性紅斑(りんご病)
主に学童期前後の小児が罹ります。頬部の蝶形紅斑と四肢のレース様紅斑が特徴です。発熱はほとんどありません。経気道感染ですが、発疹出現時には、感染力がないので、隔離の必要はありません。発疹は太陽に当たると、増強、再発することがあります。

B.関節炎
年長児から成人に出現。両側対称性に、手、足、肘などに出現し、痛みがあります。

C.aplastic crisis
B19は赤芽球に感染し、赤血球産生を抑制します。遺伝性球状赤血球症などの慢性溶血性貧血患者で、急激な貧血が起こり、発熱、倦怠感などを認めます。治療は濃厚赤血球輸血。

D.胎児水腫
B19に未感染の妊婦の感染により、胎児のaplastic crisisや心筋炎を起こし、重症貧血や、心不全を起こす。

E.脳炎、脳症

 

9.シェーグレン症候群
女性に圧倒的に多く、自己免疫疾患と考えられ、外分泌腺の破壊により外分泌機能が低下します。その症状として涙の分泌低下による乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、口内乾燥(ドライマウス)が認められ、それ以外に反復性耳下腺腫脹、虫歯の増加があります。また、発熱、関節炎、環状紅斑、全身リンパ節腫脹も認めます。

診断は、口唇小唾液腺の生検、唾液腺造影、シルマー試験(涙の分泌機能をみる)
血清中の、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗核抗体、リウマチ因子陽性、高ガンマグロブリン血症、白血球減少などで行います。 またシェーグレン症候群は、他の自己免疫疾患を合併しやすく、SLE(全身性エリテマトーデス)、関節リウマチ、慢性甲状腺炎を合併します。

 

10.マイコプラズマ感染症
Mycoplasma Pneumoniaeの感染で起きる疾患で、肺炎が主たるものです。肺炎の症状は、発熱と咳で、レントゲンをとってはっきりと肺炎の影を認めても、本人は比較的元気で食欲もあることが多いのが特徴です。学童期を中心に発症し、校内感染、家族内感染を認めます。潜伏期は2-3週と長く、診断は血液検査で白血球の軽度増加から低値、CRP陽性、抗体価の上昇で行います。

治療は抗生剤を投与しますが、マイコプラズマは細胞壁を持たないので、ペニシリンやセフェム系の抗生剤は無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系の抗生剤を使用します。
肺炎以外の疾患としては、Stevens-Johnson症候群、心筋炎、髄膜脳炎、ギランバレー症候群、血球貪食症候群などがあります。

 

11.川崎病
4歳以下の乳幼児に好発する、原因未確定の急性熱性疾患。男児にやや多く見られます。病態は全身性の血管炎で、特に心臓の冠動脈病変が問題になり、ここ数年は、年間に1万人の発症があります。
診断は、
1.5日以上続く発熱。
2.手掌足底や指趾先端の発赤、硬性浮腫。
3.不定形発疹。
4.両側眼球結膜の充血。
5.口唇発赤、イチゴ舌。
6.頚部リンパ節腫脹。

以上6症状のうち5項目があれば疑わしく、以下の症状や、検査所見を参考にします。BCG接種部位の発赤、回復時の指先の膜様落屑、白血球増多、CRP陽性、血小板増多、GOT・GPT上昇、軽度黄疸、胆のう腫大、蛋白尿、尿沈渣の白血球増多、心エコー所見(心のう水貯留、冠動脈異常)などです。
川崎病で最も問題になるのは、心臓病変です。

急性期の、心筋炎、心内膜炎やそれによる心のう水貯留。それと回復期の冠動脈病変です。冠動脈は、第7病日前後から拡大を始め、冠動脈瘤を形成するものがあります。内径8mmを超える大きなものは、狭窄病変となり、心筋梗塞の原因になります。川崎病が報告された当初は、急死する子供がかなりいたのですが、その原因のひとつは心筋梗塞と考えられます。
治療は、冠動脈病変併発の抑制と血栓形成の予防にあります。急性期の炎症と血栓形成を抑えるためのアスピリンと冠動脈病変抑制のためのヒト免疫グロブリンが投与されます。ヒト免疫グロブリンは、最初は200-400mg/kgの5日間点滴静注が行われましたが、最近は1g/kg2日間などの超大量療法が行われるようになってきています。

余談ですが、ボリショイサーカスが川崎病を支援していて、クリニックに毎夏サーカスの割引券が回ってきます。昨年何十年ぶりにボリショイサーカスを見に行き楽しんできました。会場には、川崎病の名前の由来になった川崎先生もお見えになって、挨拶をされていました。

 

12.百日咳
百日咳の特徴的な症状は、発作性の長く続く咳とそれに引き続くレプリーゼというヒュー音です。新生児ではチアノーゼを認め、ミルクが飲めずに入院が必要になることもあります。
熱は無く、透明な痰様のものを吐くこともあります。原因は百日咳菌による感染で、治療はマクロライド系抗生剤を2週間服用します。ただ治療後も咳は長く残ることが多いので、予防が第一で、DPTワクチンの接種が勧められます。

ここ数年成人の百日咳の報告が増えています。2000年には、数%でしたが07年には30%と新生児と同じ位になりました。成人の場合は、特徴的な咳とならず、ただいつまでも咳が止まらないと様子を見られている場合があります。ワクチン未接種の子供が百日咳になった時は、両親、兄弟に原因があることが多いので、成人で咳がいつまでも止まらない時は、百日咳も考える必要があります。

小児の百日咳では、血液検査で、白血球増多、リンパ球増多(白血球の70%以上),CRP陰性が参考になります。DPTワクチンは、生後3ヶ月から接種可能ですので、できたらBCGの前に接種するのが良いと思います。